バイク便で運べない主な品目
バイク便各社が共通して受託を拒否する代表例は、爆発物や可燃性ガス、引火点の低い溶剤など消防法で危険物に分類される化学品です。ライター用ガスカートリッジやスプレー缶もガス漏れや温度上昇で破裂する恐れがあり、車両が転倒した場合に二次災害を招きかねません。
さらに現金・金券・クレジットカード情報が書かれた書類は盗難・紛失時の損害が甚大になるため、一般に取り扱い不可です。生きた動物と生鮮食品も温度管理や振動の影響を考慮すると二輪車での長距離輸送には不向きとされ、多くの事業者がケージや保冷コンテナの使用義務を満たせないとして断る傾向にあります。ガラス製アート作品や精密検査機器のように微細な衝撃で破損する荷物は、振動吸収梱包を施しても保障対象外とされる場合が多い点にも注意が必要です。
禁止の根拠とリスク
危険物の輸送は道路運送車両法、消防法、貨物自動車運送事業法の3つが交差し、車両構造や許可証を満たさない限り運搬自体が違法となります。バイク便用のスクーターや軽二輪は専用タンク・換気装置を備えていないため、漏洩時にライダーが有毒ガスを吸入し、周囲へ火災が拡大する危険があります。現金や金券は「高価品約款」の適用外となり、事故がなくても紛失賠償額が上限を超えるリスクを抱えます。
動物輸送は動物愛護法によって温度・湿度管理が義務づけられており、シート下ボックスやリアボックスでは基準を満たせません。生鮮品については食品衛生法と自主基準により、10℃以下や−18℃以下といった温度帯を保つ「コールドチェーン」が必須ですが、バイク便は停車時間ごとに外気温の影響を受けるため維持が困難です。精密機器や美術品の破損は輸送過程の振動が主因で、車体のエンジン振動と道路段差を直接受ける二輪ではトラックのエアサス車両と比べ揺れが大きく、補償対象外のケースが大半を占めます。結果として、法令違反や損害賠償を回避する観点から事業者は取り扱いを拒否し、荷主の信用低下やビジネス停止リスクを避けています。
代替手段と依頼時のチェックポイント
危険物を届ける際は、消防法の許可を取得した専門業者が保安基準適合車で運ぶルートを選ぶのが鉄則です。
少量のアルコール消毒液や塗料であっても「危険物少量運搬届」の届け出要否を自治体に確認し、書面控えを同封すると荷受け拒否を防げます。現金は銀行の現金護送便、金券や貴金属は運送保険を上乗せしたセキュリティ輸送が安全です。
生体や生鮮品については、温度管理機能を備えたハイブリッド車両と保冷箱を持つクール便を検討し、到着時間と温度記録データを受領証と併せて残すことでトレーサビリティを確保できます。精密機器や美術品は、衝撃吸収材による多重梱包を行ったうえで、低振動サスペンション車両を有する美術・精密専門便が望ましいでしょう。
もし「どうしてもバイク便を使いたい」事情がある場合は、事前に品目と梱包写真を送り、事業者の責任範囲を示した運送約款を確認することが欠かせません。荷姿・重量・外箱サイズを正確に伝え、集荷当日に変更がないよう準備すれば、現地での追加費用や受取拒否のトラブルを防げます。二輪ならではのスピードを活かすには、法令と約款を意識し、荷物特性に応じた専門ルートを選び取る慎重さが欠かせません。